女性の薄毛の悩みの中で、特に多く見られるのが「女性型脱毛症(FAGA/FPHL:Female Pattern Hair Loss)」です。男性のAGA(男性型脱毛症)とは異なる特徴を持ち、適切な対策を講じるためには、まずFAGAについて正しく理解することが大切です。FAGAの主な原因は、加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の減少と、それに伴うホルモンバランスの乱れ、そして遺伝的素因などが関与していると考えられています。女性ホルモンであるエストロゲンは、髪の成長期を維持し、髪にハリやコシ、ツヤを与えるなど、髪の健康にとって非常に重要な役割を担っています。しかし、更年期(一般的に40代後半から50代前半)に近づくと、卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。これにより、髪の成長サイクルが乱れ、成長期が短縮され、休止期に入る毛髪の割合が増加します。その結果、髪の毛一本一本が細く弱々しくなり、全体のボリュームが失われ、抜け毛が増え、地肌が透けて見えるようになるのです。FAGAの症状の現れ方としては、男性のAGAのように生え際が大きく後退したり、頭頂部がはっきりと円形に薄くなったりすることは比較的少なく、頭頂部の分け目を中心に、髪全体がびまん性(広範囲)に薄くなっていくのが特徴です。「クリスマスツリーパターン」と呼ばれる、分け目の前方が後方よりも薄くなるパターンもよく見られます。FAGAの対策としては、まず専門医(皮膚科や女性薄毛専門クリニックなど)による正確な診断を受けることが重要です。医師は、問診や視診、マイクロスコープ検査などを行い、FAGAの進行度や他の脱毛症の可能性を評価します。治療法としては、日本で唯一、女性の薄毛治療薬として承認されている「ミノキシジル」を有効成分とする外用薬の使用が推奨されます。ミノキシジルは、毛母細胞を活性化させ、血行を促進し、発毛を促す効果が期待できます。また、ホルモンバランスを整えるためのアプローチとして、大豆イソフラボンなどのサプリメントの摂取や、場合によっては婦人科医と連携してホルモン補充療法が検討されることもあります。さらに、生活習慣の改善(バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスケアなど)や、適切な頭皮ケアも、FAGAの進行を遅らせ、症状を改善するためには不可欠です。
8月13