日本人におけるハミルトンノーウッド分類の適用

日本人におけるハミルトンノーウッド分類の適用

ハミルトン・ノーウッド分類は、元々欧米人男性のAGA(男性型脱毛症)の進行パターンを基に作成された分類法ですが、日本人男性のAGAに対しても広く適用されています。しかし、人種によって髪質や頭蓋骨の形状、そして薄毛の進行パターンに若干の違いが見られるため、適用する際にはいくつかの点を考慮する必要があります。日本人の髪質は、欧米人に比べて一般的に太く、直毛である傾向があります。そのため、同じ程度の脱毛面積であっても、欧米人よりも地肌が透けて見えやすく、薄毛が目立ちやすいと感じることがあります。また、日本人は頭頂部から薄くなるO字型の脱毛パターン(Ⅲ vertex型やⅤ型、Ⅵ型に進行しやすい)が比較的多いと言われています。一方、欧米人では、前頭部の生え際から後退していくM字型のパターンがより顕著に見られる傾向があります。ハミルトン・ノーウッド分類は、これらのM字型と頭頂部型の両方の進行パターンをカバーしているため、日本人にも適用しやすい分類法と言えます。しかし、中には、この典型的なパターンに当てはまらない、非典型的な進行の仕方をする日本人もいます。例えば、生え際の後退はあまり見られないものの、前頭部全体の密度が低下していく diffuse unpatterned alopecia (DUPA) のようなタイプや、頭頂部だけでなく側頭部や後頭部にも薄毛が見られるケースなどです。このような非典型的なパターンに対しては、ハミルトン・ノーウッド分類だけでは十分に評価しきれない場合もあります。そのため、日本の皮膚科医やAGA専門医は、ハミルトン・ノーウッド分類を参考にしつつも、日本人特有の髪質や進行パターン、そして個々の患者さんの状態を総合的に評価し、よりきめ細やかな診断と治療方針の決定を行っています。近年では、日本人向けにアレンジされた分類法や、より詳細な評価基準も提案されています。いずれにしても、ハミルトン・ノーウッド分類は、AGAの進行度を客観的に把握し、医師と患者さんが共通の認識を持つための有効なツールであることに変わりはありません。人種差を考慮しつつ、この分類法を適切に活用することが、より良いAGA診療に繋がるのです。