AGA(男性型脱毛症)治療薬を個人輸入する大きな動機の一つに、「費用の安さ」が挙げられます。国内のクリニックで処方してもらうよりも、個人輸入代行サイトなどで購入する方が、一見すると経済的に魅力的に見えるかもしれません。しかし、なぜ個人輸入のAGA治療薬は安価なのでしょうか。そのカラクリと、そこに潜む罠について理解しておく必要があります。まず、個人輸入されるAGA治療薬の多くは、海外で製造されたジェネリック医薬品(後発医薬品)です。ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許が切れた後に、他の製薬会社が同じ有効成分で製造・販売するものであり、開発費用が抑えられるため、一般的に先発医薬品よりも安価に提供されます。これが、個人輸入薬が安い理由の一つです。また、製造国の人件費や物価が日本よりも低い場合、製造コスト自体が安く抑えられている可能性もあります。さらに、個人輸入代行サイトは、医療機関のような設備投資や人件費がかからず、オンラインで広範囲に販売できるため、マージンを抑えて安価に提供できるという側面もあるでしょう。しかし、これらの「安さ」には、見過ごせないリスクが伴います。最も大きな罠は、やはり「偽造医薬品」や「品質の低い粗悪品」の存在です。正規の製造ルートや品質管理基準を満たしていない工場で、安価な原料を使って製造された模倣品や、有効成分が規定量に満たないもの、あるいは全く含まれていないもの、さらには有害な不純物が混入しているものなどが、安価な価格で出回っている可能性があります。これらの製品は、当然ながら期待される効果が得られないばかりか、深刻な健康被害を引き起こす危険性があります。また、適切な温度管理や湿度管理がなされずに輸送・保管された場合、薬剤が変質したり劣化したりして、有効性や安全性が損なわれている可能性も否定できません。これらの品質に関する問題は、個人輸入の場合、購入者が確認することはほぼ不可能です。さらに、個人輸入代行サイトの中には、法的に問題のある運営を行っている悪質な業者も存在する可能性があります。そのような業者から購入した場合、金銭的なトラブルに巻き込まれたり、個人情報が悪用されたりするリスクも考えられます。AGA治療薬の個人輸入における「安さ」は、品質や安全性、そして万が一の際の補償が犠牲になっている可能性があることを忘れてはいけません。
5月25