女性にも、男性のAGA(男性型脱毛症)と似たようなメカニズムで薄毛が進行する「女性型脱毛症(FAGA/FPHL:Female Pattern Hair Loss)」が見られることがあります。男性のAGAほどはっきりとした生え際の後退や頭頂部の脱毛は起こりにくいものの、頭頂部や分け目を中心に髪全体がびまん性(広範囲)に薄くなり、地肌が透けて見えるようになるのが特徴です。このFAGAの対策には、男性とは異なるアプローチが必要となる場合があります。FAGAの主な原因は、加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少や、ホルモンバランスの乱れ、そして遺伝的素因などが関与していると考えられています。女性ホルモンは、髪の成長期を維持し、髪にハリやコシを与える働きがあるため、その分泌量が減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、薄毛が進行しやすくなるのです。FAGAの対策として、まず専門医による正確な診断が不可欠です。皮膚科や女性薄毛専門クリニックを受診し、薄毛の原因を特定してもらいましょう。FAGAと診断された場合、治療の選択肢としてまず挙げられるのが「ミノキシジル外用薬」です。ミノキシジルは、女性の薄毛治療薬として日本で唯一承認されている有効成分であり、毛母細胞を活性化させ、血行を促進し、発毛を促す効果が期待できます。女性用としては、1%濃度の製品が市販されており、クリニックではより高濃度のものが処方されることもあります。内服薬に関しては、男性のAGA治療に用いられるフィナステリドやデュタステリドは、原則として女性への投与は禁忌とされています。ただし、閉経後の女性で、男性ホルモンの影響が強いタイプの薄毛の場合に、医師の厳格な管理のもとで「スピロノラクトン」という薬剤がオフペイント(承認外使用)で処方されることがあります。スピロノラクトンは、抗アンドロゲン作用(男性ホルモンの働きを抑える作用)があり、FAGAの改善に繋がる可能性があります。これらの薬物療法と並行して、生活習慣の改善も非常に重要です。バランスの取れた食事(特に鉄分、亜鉛、タンパク質、ビタミンB群など)、質の高い睡眠、適度な運動、ストレスケアは、ホルモンバランスを整え、頭皮環境を健やかに保つために不可欠です。また、頭皮マッサージや育毛シャンプー、育毛剤の使用も、補助的なケアとして有効な場合があります。
11月30