ハミルトン・ノーウッド分類は、AGA(男性型脱毛症)の進行度を客観的に評価するだけでなく、適切な治療法を選択する上でも重要な指標となります。進行ステージによって、推奨される治療法や期待できる効果が異なるため、医師はこの分類を参考にしながら、患者さん一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。Ⅰ型~Ⅱ型(軽度):この段階では、まだ薄毛の症状が軽微であるため、積極的な薬物治療は必ずしも必要ない場合もあります。しかし、将来的な進行を予防したい、あるいは現状を維持したいという希望があれば、医師の指導のもとで、フィナステリド内服などの予防的な治療を開始することも選択肢の一つです。また、生活習慣の改善(バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスケアなど)や、育毛シャンプー、育毛剤の使用といったセルフケアも、頭皮環境を整え、AGAの進行を遅らせるのに役立つ可能性があります。Ⅲ型~Ⅳ型(中等度):このステージになると、多くの方が薄毛を自覚し、積極的な治療を希望します。治療の基本となるのは、薬物療法です。フィナステリドまたはデュタステリドの内服薬でAGAの進行を抑制し、ミノキシジル外用薬で発毛を促進するという併用療法が一般的に行われます。効果を実感するまでには数ヶ月以上の継続が必要ですが、早期に治療を開始すれば、良好な改善が期待できます。Ⅴ型~Ⅵ型(中等度~重度):薄毛の範囲がかなり広がり、薬物療法だけでは満足のいく効果が得られにくくなってくるステージです。薬物療法を継続しつつ、より積極的な治療法として「自毛植毛術」が有力な選択肢となります。自毛植毛は、AGAの影響を受けにくい後頭部などから自身の毛髪を移植するため、移植した毛髪は生着すれば永続的な効果が期待できます。ただし、費用が高額になることや、外科的な手術であるため、メリットとデメリットを十分に理解した上で検討する必要があります。Ⅶ型(最重度):AGAが最も進行した状態で、薬物療法や自毛植毛術の効果も限定的となる可能性があります。この段階では、かつらやウィッグの使用、あるいは坊主頭にするといった、見た目をカバーする方法も現実的な選択肢となります。ただし、諦めずに医師に相談し、現状で可能な最善の策について話し合うことが大切です。ハミルトン・ノーウッド分類は、あくまで治療法選択の一つの目安です。
4月27