私が自分のつむじハゲを自覚したのは三十代半ばのある日のことでした。それまで自分は髪の量が多い方だと思っていましたし美容院でも「梳いておきますか?」と聞かれることが常だったので薄毛とは無縁の人生だと信じ込んでいました。しかしその自信は職場のエレベーターに乗った瞬間に粉々に打ち砕かれました。ふと視線を上げた先にあった防犯カメラのモニター。そこに映し出されていたのは頭頂部がカッパのお皿のように白く光っている見知らぬ中年男性の姿でした。「誰だこのハゲてる人は」と思った次の瞬間それが自分の頭であることに気づき血の気が引くような衝撃を受けました。慌ててトイレに駆け込み合わせ鏡で確認してみると確かにモニターで見た通りつむじ周辺の地肌が露わになり弱々しい髪がへばりつくように生えている無惨な光景がありました。これまで鏡の前で前髪ばかり気にしていた自分がいかに間抜けだったかを思い知らされました。それからの毎日は恐怖との戦いでした。電車で座るのが怖くなり後ろに人が立つと視線が気になって冷や汗が出るようになりました。市販の育毛トニックを大量に買い込み叩き込むように頭皮につけましたが改善の兆しは見えず焦りだけが募っていきました。転機となったのは妻に正直に悩みを打ち明けたことでした。妻は「実は少し前から気になっていた」と言い一緒にAGAクリニックを探してくれました。診断の結果は中等度のO型AGA。医師からは「頭頂部は薬が効きやすいから諦めないで」と励まされ治療を開始しました。内服薬と外用薬を併用し半年が経った頃妻から「黒くなってきたね」と言われた時の喜びは忘れられません。今では防犯カメラの映像を見ても落ち込むことはなくなりました。あの時ショックを受けたことは辛い経験でしたがそれがなければ今頃私の頭頂部はもっと深刻な状態になっていたはずです。気づくことは怖いことですがそれは改善へのスタートラインでもあります。もし何か違和感を感じているなら勇気を持って確認してみてください。そこからしか始まらない変化があるはずです。