原因と症状が全く異なるAGAと円形脱毛症では、当然ながら、その「治療法」も大きく異なります。自己判断でAGAの治療法を円形脱毛症に試しても効果がないばかりか、適切な治療の機会を逃してしまうことになりかねません。まず、「AGA(男性型脱毛症)」の治療は、その原因である男性ホルモン(DHT)の働きを抑えることが主軸となります。現在、最も標準的で効果が証明されているのが、「フィナステリド」や「デュタステリド」といった内服薬です。これらは、DHTの生成を阻害し、抜け毛の進行にブレーキをかける働きがあります。これに加えて、発毛を促進する「ミノキシジル」の外用薬(塗り薬)を併用することで、抜け毛を抑えながら、新たな髪の成長を促すという、攻守両面からのアプローチが基本となります。これらの治療は、継続することで効果を発揮する、長期的なコントロールを目指すものです。一方、「円形脱毛症」の治療は、異常をきたした免疫機能の働きを抑え、毛根への攻撃を鎮めることが目的となります。治療法は、脱毛斑の範囲や重症度によって多岐にわたります。脱毛範囲が狭い軽症の場合は、まず「ステロイド外用薬」や「塩化カルプロニウム外用薬」(血行促進剤)の塗布が行われます。これらで改善しない場合や、範囲が広い場合には、より強力な治療法が選択されます。例えば、液体窒素で脱毛斑を冷却し、免疫細胞の働きを変化させる「液体窒素療法」や、特殊な化学薬品を塗布して、意図的に軽いかぶれを起こさせ、免疫の攻撃対象をそらす「局所免疫療法」などがあります。さらに、症状が急速に進行している重症例では、「ステロイド内服薬」や「ステロイド局所注射」といった、より全身的なアプローチが取られることもあります。このように、AGAの治療が薬物療法に集約されるのに対し、円形脱毛症の治療は、皮膚科的な処置も含めた、多彩な選択肢の中から、症状に応じて最適なものが選ばれるのです。