AGAと円形脱毛症を区別する上で、最も根本的な違いは、その「発症原因」にあります。なぜ髪が抜けるのか、そのメカニズムが全く異なるのです。まず、「AGA(男性型脱毛症)」の原因は、極めて明確です。それは、体内の男性ホルモンであるテストステロンが、「5αリダクターゼ」という酵素の働きによって、より強力な脱毛ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換され、このDHTが毛根に作用することです。遺伝的にDHTの影響を受けやすい体質の人の毛根は、このDHTからの「髪の成長を止めろ」という命令を受け取ると、ヘアサイクルが乱れ、髪が細く、短くなって抜け落ちてしまいます。これは、いわばプログラムされた体内の化学反応であり、時間をかけてゆっくりと進行していく、体質的な現象と言えます。一方、「円形脱毛症」の原因は、現代の医学でもまだ完全には解明されていませんが、現在最も有力とされているのが「自己免疫疾患」であるという説です。私たちの体には、外部から侵入してきたウイルスや細菌などを攻撃し、体を守るための「免疫」というシステムが備わっています。しかし、何らかのきっかけでこの免疫システムに異常が生じ、本来守るべきはずの自分自身の組織、この場合は髪の毛を作り出す「毛包(毛根)」を、誤って敵と見なして攻撃してしまうのです。免疫細胞であるTリンパ球が毛包を攻撃すると、毛根はダメージを受け、髪の毛が突然まとまって抜け落ちてしまいます。その引き金として、精神的なストレスや、アトピー素因、感染症などが関与していると考えられていますが、直接的な因果関係はまだ分かっていません。AGAが、プログラムされた内部からの命令であるとすれば、円形脱毛症は、身内であるはずの免疫システムの「暴走」や「反乱」によるもの。この原因の違いが、症状の現れ方や治療法の大きな違いへと繋がっていくのです。
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