「生え際も後退してきたし、最近、円形脱毛症のようなものもできた気がする」。性質の異なるAGAと円形脱毛症ですが、これらが一人の人間に「同時に発症する(併発する)」ことはあるのでしょうか。答えは、イエスです。AGAと円形脱毛症は、その発症メカニズムが全く異なるため、それぞれが独立した疾患として、同じタイミングで、あるいは時期をずらして、一人の頭皮に共存することは十分にあり得ます。AGAは、遺伝的素因と男性ホルモンによって引き起こされる、いわば体質的な変化であり、加齢と共にそのリスクは高まっていきます。一方、円形脱毛症は、自己免疫システムの異常によって、年齢に関係なく、誰にでも突然起こりうる疾患です。例えば、もともとAGAの素因を持っている30代の男性が、仕事の強いストレスをきっかけに、円形脱毛症を発症する、というケースは決して珍しくありません。この場合、彼の頭皮では、前頭部や頭頂部でAGAによるゆっくりとした薄毛が進行しつつ、後頭部や側頭部などに、円形脱毛症による急激な脱毛斑が現れる、という複雑な状態になります。このような併発が疑われる場合、治療はより慎重に進める必要があります。なぜなら、それぞれの疾患に対して、適切な治療法が異なるからです。AGAに対してはフィナステリドなどの内服薬が有効ですが、これは円形脱毛症には効果がありません。逆に、円形脱毛症の治療で使われるステロイド薬は、AGAの進行を止めるものではありません。そのため、自己判断は極めて危険です。必ず専門の医師の診断を受け、どちらの症状が優位なのか、あるいは両方の治療を並行して行うべきなのかを、正確に判断してもらう必要があります。例えば、まずはステロイド外用薬などで円形脱毛症の炎症を鎮めることを優先し、症状が落ち着いてからAGA治療を開始する、といった段階的なアプローチが取られることもあります。二つの異なる敵と同時に戦うには、専門家である医師の的確な戦略が不可欠となるのです。
AGAと円形脱毛症は併発することがあるのか