ある日、鏡を見て生え際の後退に気づく、あるいは、美容師に頭頂部の地肌の透けを指摘される。こうした抜け毛や薄毛の悩みが生じた時、多くの人は漠然と「ハゲてきた」と感じるかもしれません。しかし、「髪が抜ける」という同じ現象の裏には、全く異なる原因と性質を持つ、二つの代表的な脱毛症が潜んでいる可能性があります。それが、「AGA(男性型脱毛症)」と「円形脱毛症」です。この二つは、薄毛を引き起こすという点では共通していますが、その原因、症状の現れ方、そして治療法に至るまで、ほとんど別物と言っていいほど大きな違いがあります。AGAは、男性の薄毛の9割以上を占める最も一般的な脱毛症で、その主な原因は「遺伝的素因」と「男性ホルモン」の影響です。ゆっくりと、しかし確実に進行していくのが特徴で、生え際や頭頂部といった特定の部位から薄くなっていきます。一方、円形脱毛症は、年齢や性別を問わず誰にでも起こりうる「自己免疫疾患」の一種と考えられています。何らかのきっかけで免疫機能に異常が生じ、自身の毛根を異物と誤認して攻撃してしまうことで、突然、髪が抜け落ちてしまうのです。この二つの違いを正しく理解することは、自分の抜け毛の原因が何であるかを見極め、適切な対策への第一歩を踏み出すために、非常に重要です。自己判断で「AGAだろう」と思い込み、見当違いのケアを続けているうちに、実は治療が必要な円形脱毛症を悪化させてしまう、といった事態も起こりかねません。似ているようで全く違う、この二つの脱毛症の特性を知ることから、あなたの悩みへの正しいアプローチが始まります。