現代社会を生きる私たちにとって、ストレスは避けて通れない存在です。仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安。こうした精神的なストレスが、実は「薄毛」と「高血圧」という二つの問題を、体の内側で静かに結びつけていることをご存知でしょうか。その仲介役となっているのが、ストレスを感じた時に私たちの体から分泌される「ストレスホルモン」です。代表的なストレスホルモンには、「コルチゾール」や「アドレナリン」「ノルアドレナリン」などがあります。これらは、本来、外敵から身を守るための「闘争・逃走反応」を引き起こすホルモンです。例えば、危険な動物に遭遇した時、心拍数を上げて血圧を高め、筋肉に素早く血液を送って、戦うか逃げるかの準備をさせる。これが、ストレスホルモンの本来の役割です。しかし、現代社会のストレスは、猛獣に襲われるような一時的なものではなく、慢性的で持続的なものがほとんどです。そのため、ストレスホルモンが常に分泌され続け、体は四六時中、臨戦態勢を強いられることになります。アドレナリンやノルアドレナリンは、血管を強力に収縮させる作用があります。血管が収縮すれば、血液の通り道が狭くなるため、心臓はより強い力で血液を送り出さなければならず、結果として血圧が上昇します。これが、ストレスが高血圧を引き起こす主要なメカニズムです。そして、この血管収縮の影響は、当然ながら頭皮の毛細血管にも及びます。ただでさえ細い頭皮の血管がさらに収縮すれば、毛根への血流は著しく低下し、髪の成長に必要な酸素や栄養が届かなくなります。これが、ストレスによる薄毛の大きな原因となります。さらに、コルチゾールなどのストレスホルモンは、髪の成長サイクルにも直接的な影響を与え、多くの髪を成長期の途中であるにもかかわらず、強制的に休止期へと移行させてしまうことがあります。これにより、一気に抜け毛が増える「休止期脱毛」が引き起こされるのです。このように、慢性的なストレスは、ホルモンバランスを介して、血圧の上昇とヘアサイクルの乱れという二つの現象を同時に引き起こします。つまり、ストレスマネジメントは、高血圧を予防・改善するためだけでなく、健やかな髪を維持するための重要な鍵を握っているのです。良質な睡眠、適度な運動、趣味やリラックスできる時間を持つことが、あなたの血圧と髪の両方を、見えない敵から守ってくれるのです。